体にいいはずが逆効果?健康志向が社会のトレンドとなって久しい。ジム通い、ヴィーガン食、サプリメント、16時間断食…。ところが、そうした「完璧な健康習慣」が逆に体調を崩す要因になる、という皮肉な現象が静かに広がっている。
ある調査によれば、日本の20〜40代の約3割が「過剰な健康意識」で疲れを感じた経験があるという。具体的には、栄養バランスを意識し過ぎて食生活がかえって単調になり、極端な制限で免疫力が落ちたり、睡眠時間を削ってまでジムに通い疲労が慢性化するケースが目立つ。
「体にいい」と聞くと取り入れたくなるの人情。しかし、問題なのは、その「いいこと」が積み重なると全体の調和が崩れる点だ。ちょうど、サラダにドレッシングをかけすぎて野菜がびしょびしょになり、本来の爽やかさが失われるようなものだ。健康もひとつの「バランス料理」で、味付けが濃すぎれば不愉快になる。
栄養学の専門家は、ここである共通点を指摘する。「健康オタク」がやりがちなのは「ゼロか百か」の発想だ。白米は一切食べないとか、油は完全に排除するといった極端な行動は、短期的には達成感を生むかもしれないが、長期的には不足やストレスを招く。結果、肌荒れや胃腸不良、イライラの増加など、「不健康オタク」になってしまうのだ。
一例として、流行中の“ファスティング”。数日から一週間の断食が若者を中心に人気だが、仕事や学業と重なると集中力が続かず、ひと息ついた途端にリバウンドで過食、というオチも少なくない。SNSで「グリーンスムージー片手に断食三日目!」と投稿した翌日に「ラーメン大盛り完食!」と復帰してしまう姿には、思わず笑ってしまう人も多いだろう。
そもそも、人間の体は「完璧」を前提に作られていない。少々の不摂生や気まぐれこそ、ホルモンバランスや精神的安定にプラスに働く。毎日玄米を噛み締めつつ無添加プロテインを飲むのも立派だが、時には深夜にこっそりポテトチップスをつまみながら映画を観ることが、翌日の活力につながることもある。
医療現場からも面白い報告がある。「風邪をひいた患者の一部は、過剰にサプリを摂取した“健康優等生”だった」というのだ。免疫サポートのつもりで摂った大量のビタミンやミネラルが、逆に内臓を疲れさせた可能性も指摘されている。健康に対する熱意が原因で体を壊すのは、まさに逆説的だ。
「ゆるく、長く」が生き残る道
結局、健康とは「オタク的なストイックさ」ではなく、ほどよい「ゆるさ」との共存で成り立つ。無理やり走るより、季節の風を楽しみながら散歩をする。1日3食に縛られるより、腹八分目で満足する。SNSの“映える健康法”に振り回されるより、自分の体の声を聞く。
過剰な努力で短期間に理想を追うより、無理なく続けられる小さな習慣のほうが、実は長寿への近道だ。健康オタクが最後に学ぶべき教訓は「頑張りすぎると不健康になる」という、人間社会に残された最大のジョークかもしれない。



